⑤インド神話とヨガ哲学で読み解く 聖者カウンディーニャのポーズ

⑤ インド神話とヨガ哲学で読み解く 聖者カウンディーニャのポーズの物語

前後に伸びる脚が一本の道を描く
揺るがぬ信頼が、未来をひらく。

Kauṇḍinyāsana(聖者カウンディーニャのポーズ)
写真:Kauṇḍinyāsana(聖者カウンディーニャのポーズ)

床すれすれの胸、一直線に伸びる脚、手のひらに集まる静かな重さ。
吐く息とともに前後へ伸びるラインがフロアの上に一本の道を描きます。
両腕で大地を押し、心は静かに空へ。凛とした集中が、このアーサナの本質です。

ブッダとカウンディーニャ|“信頼”が導いた中道

今から約2500年前、ブッダ(お釈迦さま)は真理を求めて修行の道へ。
そのそばに静かに師を見守る修行僧がいました。名はカウンディーニャ
「この人は必ず悟りに至る」と直感したと伝えられます。

当時は「体を極限まで苦しめれば悟りに近づく」という考えが主流。
厳しい苦行を重ねたのち、ブッダは気づきます。
厳しすぎても、楽すぎてもいけない。中道こそが大切だと。
多くが離れる中でも、カウンディーニャは師を信じて寄り添い続けたと語られます。

やがて悟りの後、鹿野苑で説かれた初めての教え(初転法輪)を、
最初に理解して悟りに至ったのもカウンディーニャ。
経典では「理解した者(アニャータ・カウンディーニャ)」と讃えられます。

信じ抜く心は、道をつくる。

カウンディーニャのポーズが伝える“中道の身体感覚”

両腕で大地を押し、脚を前後へ等しく伸ばすこのアーサナは、
過度でも不足でもないちょうどよい均衡を手・胸・軸で探る練習。
外の状況が揺れても、呼吸の真ん中に留まる
それが体で味わう中道です。

前後に開く脚は「道」。手のひらの圧は「今この瞬間」。
二つが結ばれると、心は静かに前へ進む。

今を生きる私たちへ 評価より“信頼”へ

人の評価や情報に引っ張られる日々でも、
呼吸に戻ることで揺るがない中心に触れられます。
ポーズが完成しなくても大丈夫。
挑戦するその時間が、自分と人生を信じる力を育ててくれます。

もし今、誰かの言葉に迷ったり、
自分の進む道に自信が持てなかったりしても、
あなたの中には必ず静かな真ん中があります。
呼吸にふれて、そこへ戻ってみてください。

道は、あなたの内側から始まる。


9月23日|ヨガ哲学ワークショップ

インド神話とヨガの教えを、生き方としてのヨガへ。
古代の物語が、今を生きるヒントに変わります。